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東京地方裁判所八王子支部 平成11年(ワ)3301号 判決 2000年8月16日

原告

株式会社大野商会

被告

有限会社聖工房

主文

一  被告は、原告に対し、金三七万七九六四円を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告に対し、金一〇八万三五二五円を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

第二事案の概要

本件は、原告が、原告車両と被告車両との間で発生した本件交通事故は、被告側の過失に事故原因があると主張して、被告に対し、不法行為に基づき損害賠償を求めている事案である。

一  前提事実

1  本件交通事故は、平成一一年六月一九日午後〇時一五分頃、原告代表者運転の原告車両が東京都多摩市貝取一四五〇番地一所在のガソリンスタンドを出て右折しようとした際、東京都多摩市貝取一四五〇番地先路上において、原告車両の右方から直進してきた被告代表者運転の被告車両との間で発生した衝突事故である(甲一、三、弁論の全趣旨)。

2  本件事故発生当時、被告車両の前方を走行していた三台の車両は、原告車両を右折させるために、いずれも停車していた(原告代表車、被告代表者、弁論の全趣旨)。

3  本件事故が発生した場所は、追越し禁止区域であり、法定速度は時速四〇キロメートルである(甲三、弁論の全趣旨)。

4  本件事故による原告車両の修理費は三六万四四五五円であった(当事者間に争いがない事実)。

5  被告代表者は、本件事故当時、社用で被告車両を運転していた(当事者間に争いがない事実)。

二  争点

1  本件事故状況及び本件事故についての当事者の責任

2  本件事故によって生じた修理費以外の原告の損害額

三  争点に対する当事者の主張

1  争点1について

(原告の主張)

(一) 原告車両がガソリンスタンドを出て右折しようとして歩道まで出たところ、原告車両の右方向から来た車両が停車し、どうぞと手招きしてくれた。続いて右方向から来た車両二台も停車してくれた。原告代表者は、これらの事実を確認の上、道路中央部に出て車体が四五度ぐらい右方向に傾斜した位置で被告車両と衝突した。

(二) 被告代表者は、はみ出し禁止の道路であるにもかかわらず、前方の確認を怠り、法定速度以上のスピードで対向車線上を走行して事故を起こしたものである。

よって、本件事故の責任は全面的に被告車両にある。

(被告の主張)

(一) 被告車両を運転していた被告代表者に前方注視義務違反の過失が認められることは争わない。

(二) しかしながら、原告車両を運転していた原告代表者にも、路外から道路に進入して車線一つを横切って右折するという進行形態を採るのであるから、右方の安全確認を十分に行って進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、停止して道を譲ってくれた車両があるため気を許して漫然と進行した過失が認められると考える。そして、原告代表者の過失割合は二割とするのが相当である。したがって、被告は、原告に生じた損害につき二割の過失相殺を主張する。

2  争点2について

(原告の主張)

(一) 事故以前の車両査定価格から事故後修理をした車両査定価格を差し引いた差額いわゆる評価損一〇万八〇〇〇円

(二) 塗装費及び代車費用 六一万一〇七〇円

本件事故によって塗装した箇所が、経年変化により、車体本体の色と違いが生じた場合の塗装費七万二四四〇円(年一回)とその間の代車使用料一三万一二五〇円(年一回)の三年分の合計六一万一〇七〇円

(被告の主張)

(一) 評価損については否認する。

評価損の請求については、評価損が認められるのは修理しても外観や機能に欠陥が生じたり、事故歴により価値の下落が見込まれる場合であるとされるところ、原告車両の損傷は比較的軽微であって車両の主要な骨格部分に損傷が及んでいないことからすると、評価損が発生するとは認められない場合であると考えられる。仮に、評価損が発生する場合であるとしても、その損害額は修理費を基準にその一、二割程度であると考えるべきである。

(二) 塗装費及び代車費用については否認する。

原告の主張する今後の修理は、必要となるか否かも確定していない将来の請求であり、また経年性変化による色落ちは通常の車にもいずれ認められるものだから、本件事故との因果関係は認められないと考えられる。

第三当裁判所の判断

一  争点1について

1  証拠(甲二ないし四、原告代表者、被告代表者)及び弁論の全趣旨並びに前提事実を総合すると、原告代表者は原告車両をガソリンスタンドから出して歩道で一旦停止させて左右の安全を確認したこと、その際、原告車両の右方から走行して来た車両三台が、原告車両を右折させるために順次停止したこと、右三台の車両が停止した場所は道路の中央線よりであったこと、原告代表者は右三台の車両以外に左右から車両が来ていないと判断したこと、原告代表者は右折するためにゆっくりと原告車両を発進させたこと、原告車両が右折するために道路の中央線を越して対向車線に入ったところ、被告車両が、追い越し禁止区域であるにもかかわらず、右三台の車両を追越すべく対向車線を時速約五〇キロから六〇キロで走行してきたために、原告車両と被告車両とが出会頭に衝突したこと、右三台の停止車両があったために原告代表者からの右方の見通しはよくなかったこと、原告代表者は原告車両を道路の中央線を越して対向車線に進入させる際に、右方の安全を確認していないこと、以上の事実が認められる。

2  前提事実及び右認定の事実によれば、被告代表者には前方注意義務違反の過失が認められ、しかも、道路の中央線よりに三台の車が停止していたことや追越し禁止区域であるにもかかわらず、被告車両が道路の中央線をはみ出して対向車線を走行していたことからすると、その過失は相当大きいと言わざるを得ない。

他方、原告代表者からは右方の見通しがよくなかったのであるから、原告車両が道路の中央線を越して対向車線に進入する際には、原告代表者は右方の安全を再度確認する注意義務があったと言うべきところ、原告代表者は、前記1認定のとおり、右注意義務を尽くしていないのであるから、この点に原告代表者の過失が認められる。

そして、前記認定の諸事情を考慮すると、原告の過失割合は二割とするのが相当である。

二  争点2について

1  甲九によると、原告車両は、本件事故によって生じた損傷により修理後も外板価値減価として一〇万八〇〇〇円分、その商品価値が低下したことが認められる。よって、右評価損一〇万八〇〇〇円は、本件事故によって生じた損害であると認めるのが相当である。なお、被告は評価損の請求は認められない旨主張しているが、被告の主張は、修理によって車両に物理的損傷がなくなっているにもかかわらず、事故歴があることによって車両の評価額が低下する場合の議論であるから、本件においてはこれを採用することはできない。

2  原告車両について本件事故によって塗装した箇所が、経年変化により、車体本体の色と違いが生じ、毎年一回塗装をせざるを得なくなると認めるに足りる証拠はない。よって、原告の主張する塗装費及び代車費用を本件事故によって生じた損害と認めることはできない。

第四結論

よって、原告の請求は、修理費用三六万四四五五円及び評価損一〇万八〇〇〇円の合計四七万二四五五円から二割を減じた三七万七九六四円の支払いを求める限度で理由があるから、右の限度で認容することとする。

(裁判官 飯淵健司)

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